Squarepusher - Hard Normal Daddy (1997)

※2020年10月22日 投稿
※2021年1月16日 体裁の調整、加筆修正

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スクエアプッシャーの2nd。

作中全体を通して、複雑に構成された高速のビートとゆらゆらと動くベースが耳の気持ちいいところをくすぐるような曲が多い。アルバム冒頭のM-1「Coopers World」は、パーカッションとピアノ・ベースの絡みが気持ちいい。M-6「Papalon」は、ジャズ的な自由さのある曲。適当にBGMとして流していても楽しめるが、集中して聴いてみると楽曲全体の構成の美しさが感じられてより心惹かれる。他にも、フュージョンっぽい明るさやテクニカルなキメのフレーズが気持ちのいいM-7「E8 Boogie」や、プロディジーやケミカルブラザーズのような(ビッグビートと言うのだろうか)ダークで乗りやすいビートが今作中では異色なM-8「Fat Controller」あたりも印象的だ。

特に気に入っているのが、M-2「Beep Street」。高速で奏でられるパーカッションとその上で抒情的に動き回るベースラインは、暗闇を走り抜けるレーザー光のような幻想的なイメージを想起させる。時折現れるシンセサイザーの音色の残響は、光の軌跡がその輪郭を失って消えてしまう刹那のように寂しげで、その儚さにうっとりとしてしまう。アルバム全体としては少し冗長で散漫としているような印象もあるけど、この一曲で作品が引き締まっているように思える。

「ドリルンベース」という一言で形容してしまうよりは、トーマス・ジェンキンソンがどのようにして自身のルーツを音楽に落とし込んでいったのかを想像しながら聞いてみるのが楽しいのかもしれない。