『魔女の旅々』感想

一応ネタバレ注意

 

『魔女の旅々』は、今期のアニメの中で一番フラットな気持ちで見られた作品だった。基本的に各話で物語が完結していて、その内容は、ギャグっぽいものや救いのないものまで振り幅があったが、画面に出ずっぱりのイレイナちゃんが魅力的なキャラクターだったので飽きずに見ることが出来た。サヤちゃんや師匠といったサイドキャラクターを少しずつ登場させるのも、シリーズ全体に良いメリハリを生んでいて良かったと思う。

11話の時点で1クールのアニメとして十分に締めくくられていていため、最終回はどのようなものでも満足できるだろうと思っていたら、予想以上で驚いた。上にも書いたが、この作品の大きな魅力の一つは、メインキャラクターであるイレイナちゃんの一挙一動である。最終話においてそんな彼女をたくさん(muchではなく、manyの意味である)登場させることは、作品の魅力を最大限に生かしたファンサービスでありながら、同時に別の意味も持っていた。それは、メタ的な形で、これまでの物語の問題点に自ら言及し、その答えと新たな疑問を提示するということである。

9話のラストシーンを振り返ってみる。過去の世界で絶望的な光景を目の当たりにしたイレイナちゃんは、夕暮れのベンチで一人泣き叫び、大切な帽子が風に飛ばされてしまったことに目も暮れない。そんな彼女が、次のエピソードにおいてはひょっこり元気になっていることに違和感を覚えた人も少なくなかっただろう(10話のラスト数十秒間だけしかイレイナちゃんが登場しない構成はこの不調和を上手く隠しているが)。最終回では、そんな違和感にアンサーが与えられつつも、しかしそれは明確なものではない。9話で描かれたのはどの世界線なのか、今まで見てきたものは何だったのか。新たな可能性を提示された視聴者は、その余白の部分について想像を掻き立てられるのである。

サイドキャラクターの掘り下げを丁寧に進めていくことで、完結した個別のエピソードを積み重ねただけの淡泊な作品に終わらせず、かつ、最終回においてメタ的な手法を大胆に用いることで、逆に一話完結型の構造を上手く生かして作品全体に更なる広がりを持たせる、という構成が秀逸だった。ちなみにもちろん、全編を通じてイレイナちゃんが可愛かったという点でも満足度が高かった。