BORIS - Pink (2005)

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現在では「Boris」という名義を用いることも多いボリスであるが、かつては作品によって、「BORIS」と「boris」の二つの名義を使い分けていた。ここで紹介する『PINK』は、2005年に大文字の「BORIS」名義でリリースされた作品で、ヘヴィな歪みを基調とした作風となっている。

オープニングナンバーであるM-1「決別」は、このアルバムの中では激しさが控えめな楽曲だ。ギターの反響によって作り上げられた音の波は、轟音であり、そして優しくもあり、アンビエント的なゆったりとした感覚に浸らせてくれる。そこからの急転直下。M-2「PINK」、M-3「スクリーンの女」、M-4「別になんでもない」と、爆走ストーナーチューンに突入する。火を吹くように激しいサウンドに、身も心もノックアウトされる。激しさの中に、感傷を圧殺するような冷徹さがあり、それが良い。

他にも、ドゥーム的な手法を用いたM-5「ブラックアウト」や、天にも昇るような高揚感を感じさせるM-7「偽ブレッド」(イントロダクション的に挿入されているM-6「Electric」も最高に良い)も素晴らしいのだが、やはり特に印象的なのは、ラストナンバーであるM-11「俺を捨てたところ」。のっけから火を吹くような高速のギターリフで始まり、そのままバンドサウンドが爆走していく。いや、ちょっとおかしい。どうにもコード進行が薄気味悪く、いったいどこに向かって進んでいるのか分からない妙な不安感がある。そんな怪しげな響きを伴いながらも、音の塊はひたすらに突き進む。そうして進みまくったのち、徐々に、少しずつ、激しさを失っていく。ドラムは、よりスローなリズムへと変わり、そのままフェードアウト。ビートが消えようとも、轟音は鳴り続ける。そして、やがて音は調和を失い、色のない不協和音が垂れ流され続けて、そのまま楽曲は終了。結局、暗闇の先にあったのは崩壊だった。

 

改めて振り返ってみると、全編にわたって異様に殺気立った作品だ。この圧倒的なテンションの高さが中毒的で、クソほどイライラしたときや憂鬱でどうしようもないときなど、この作品を爆音で再生して、無機質で殺人的な音の塊に蹂躙されたくなる。