Girls Dead Monster - Crow Song (2010)

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アニメ『Angel Beats!』の作中バンドGirls Dead Monster(ガルデモ)のシングル。アニメ3話までで使用された挿入歌が合計3曲収録されている。作詞作曲は、アニメの脚本を手掛けた麻枝准が担当している。元々ミュージシャン畑の出身である麻枝の書くシナリオにはしばしば音楽が重要なキーワードとして登場し、また自ら作る劇中音楽は作品の世界観に深くリンクしている。シナリオにおいても音楽作品においても、強い人間不信とナイーブさを持っていることが、クリエイター麻枝の大きな特徴であり、そして彼の最大の魅力である。

M-1Crow Song」について。オクターブ奏法を用いたイントロがもろにアジカンだ。また、高速のBPMでのハイハットの裏打ちを多用したドラムのビート感はベボベを彷彿とさせる。麻枝の00年代ロキノン系ギターロック趣味が全開で、この直線的なポップネスは広くアニメファンにウケると思う(実際売れた)。M-2「Alchemy」は、とてもまっすぐな響きのするM-1と比較すると、この曲のリズムやコード進行は変化に富んでおり、また雰囲気が少しダウナーで気だるげだ。しかしあくまでロキノン系に寄せているという点では共通していて、M-1を気に入った人ならこちらもきっとすんなりと受け入れられるだろう。

さて、問題なのがM-3「My Song」である。タイトルは、syrup16gの同名曲から引用していると思われる。アコギ一本と歌唱だけで構成されたバラードで、物悲しいコード進行と歌声に乗せて、詩は孤独な物語を紡ぐ。この詩がとても強烈だ。極端な人間不信と、その中でもがく必死さ。ボーカルの岩沢*1は、自分の殻に閉じこもって音楽に救いを求めて生きてきたという過去を持つキャラクターであるが、この詩はまさに彼女の過去そのものである。この内向きな世界観は尾崎豊のそれにも通ずるところがあるが、一人称的な視点を用いて言葉を紡いだ尾崎と違って、シナリオライターである麻枝はあくまでキャラクターを通じて彼の世界観を描き出す。キャラクターソングでもあり、作家個人の歌でもあるのだ。「泣いてる君こそ孤独な君こそ 正しいよ人間らしいよ」と歌うこの曲を、極端なまでのナイーブさを反省をした上で、私は全面的に支持したい。「My Song」は名曲だ。

このシングルに収録されている三曲は、後にリリースされたアルバム『Keep The Beats!』で、ユイをボーカルに据えたバージョンとして再収録されている。恐らく世間的により支持されているのはユイ(LiSA)の方だろう。確かに、パワフルで明るい彼女の歌声は魅力的だ。しかし、marinaの線が細くどこか暗い影のある歌声も、麻枝准の世界観に合っていて良いよなあと個人的には思っている。

*1:岩沢(CVは沢城みゆき、歌唱のみmarina)はガルデモの初代ボーカル。「My Song」が劇中で流れるアニメ3話では、彼女の過去が語られる。なお、彼女はこの楽曲を歌い終えた後「消滅」し、後任のボーカルはユイ(CVは喜多村英梨、歌唱のみLISA)が受け継ぐ形となる。