中島みゆき - Singles 2000 (2002)

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01. 地上の星
02. ヘッドライト・テールライト
03. 瞬きもせず
04. 私たちは春の中で
05. 命の別名
06. 糸
07. 愛情物語
08. 幸せ
09. たかが愛
10. 目を開けて最初に君を見たい
11. 旅人のうた
12. SE・TSU・NA・KU・TE
13. 空と君のあいだに
14. ファイト!

 

中島みゆきというシンガーソングライターの作品を紹介します。『Singles 2000』は、彼女の三作目のシングルコレクションで、1994年から2000年までにリリースされたシングルを集めて収録した作品です。これまでに膨大な数の作品をリリースしている彼女ですが、その音楽作品を初めて聞こうとしている人にとっては、このアルバムは入口としてとても入りやすいと思います(まだまだ彼女の作品を網羅的に聞けているわけではない一人のファンの意見として受け止めてもらえると幸いです)。

そのように思うのは、有名な楽曲が多く収録されているからです。上に示した曲目を見ていただければ、テレビなどで聞いたことがある曲が見つかるかもしれません。75年のデビューからコンスタントに作品をリリースし続けているにも関わらず、その才能は枯れ果てるなくむしろベテランになるにつれその凄みを増しながら、多くの名曲を世に送り出しているから驚きです。

彼女は一体どのような人なのでしょうか。私はその人柄について、楽曲を聞いてよく想像してしまいます。彼女の詩の世界は、とても深遠です。直接的に何かを述べ立てることはあまりせず、修辞を用いて色鮮やかに言葉を綴ります。ゆったりとした広がりがあって、聞く人によって自由に捉えられる詩です。また、彼女の詩には弱者への深い思いやりがあります。彼女はきっと誰よりも想像力が豊かな人物なんだろうな、と私は思っています。自分ではない人間の立場を想像して、そこに自らを置き、その苦しみを疑似的に体感する。そこから一歩引いて、あくまで他人として見つめなおす。そして、誰よりも優しく、抱きしめるようにして言葉を投げかける。そのようにして詩が紡がれているように感じます。「ファイト!」という曲はラジオに届いた手紙を元にして作られたという話で有名ですが、それに限らず、彼女の詩はどれも他人のことを思いやることから始まっているように思います。

ここまで詩のことについて述べてきたのですが、彼女の楽曲において詩ばかりが浮いているということは決してありません。音と言葉が一体となっていて、身体と心に響きます。二つの等価なものが合わさって、一つの「歌」として感じられるのです。例えば、私は「瞬きもせず」という楽曲がとても好きです。感情のこもった歌唱が詩の力強さを引き立て、また美しい詩であるからこそ歌唱がエモーショナルに感じられます。どちらが欠けてもいけないのです。ちなみに、この曲はオリジナルアルバムには未収録なので、そのようなレアな曲を聞けるという意味でも『Singles 2000』は初めに手に取って聞いてみるのに適していると思います。

楽曲の魅力を語る上では、瀬尾一三によるアレンジの素晴らしさについても触れなければいけません。瀬尾氏によるアレンジは、みゆきの世界観の幽玄さを損ねることなく、最大限にその可能性を引き出し、見事に開花させています。彼女の楽曲が聞く人をそっと励ます力を秘めているのは、彼の貢献があってこそだと思います。

 

全14曲。そのどれもが、自分にとって大切な楽曲です。これまで何度も何度も彼女の楽曲に勇気づけられてきましたが、きっとこれからもそうであるような気がします。