2023-06-01 Live Hell-Seeを見てきた

豊洲で行われたsyrup16gのライブを見てきた。
趣旨としては、20年前にリリースされたアルバム『HELL-SEE』を取り上げたライブになる。結果的には、アルバムを曲順通りに全曲披露するという内容だった。

この企画は突発的に立ち上がったものではない。一年か二年前にインタビューでメンバーが再現ライブの構想を話していたのを見た記憶がある。また、アルバム再現ライブを彼らがやったのは初めてになる(十六夜のときはCOPYの再現ではなかった)。メンバーは、この再現ライブのツアーにかなりの情熱を持って臨んでいることであろう。
今日はそんなツアーの初日であり、しかもギタボの五十嵐の誕生日でもある。

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誕生日ということで行くと、『I'm 劣性』が印象的だった。今日の彼は、この曲の元の歌詞が「30代行くまで生きてんのか俺」というところを「50代行くまで」と歌っていた。まさに彼は今日50歳になったようである。今日の日だからこその哀愁と迫力があった。

やっぱり、近年のシロップは、昔の曲の歌詞にある悲壮感と進行形のメンバーの明るくのんきな雰囲気に、かなり乖離が見られるのが面白い。『I'm 劣性』も含めて、このアルバムはかなり青年から壮年の時期らしい悲壮感が漂う作品のはずなのに、現在のメンバーには中年ならではの心の余裕が見られる。例えばMCでおちょけてみたりとか。「50代行くまで」のところも、今日のライブに来ているようなファンであれば、みんな薄々その替え歌が来るのは予想していたのではないだろうか? 最近の彼らはいつもこんな調子だ。

おちゃらけは置いておいて、『不眠症』や『吐く血』、それに『パレード』なんかは、ついにようやく生で聞くことができたか、とかなり感慨深い気持ちになった。特に『パレード』は、自分の認識が正しければ、『HELL-SEE』リリース直後のライブ以来、実に20年ぶりの演奏のはずだ。
『HELL-SEE』は相当な回数聞いてきたのもあって、自分にとって『パレード』という曲はあまりに思い出深い。聞けて良かったなあ。

また、本編の15曲終了後には、アンコールで新譜の『レミゼブルー』や昔の定番曲からの演奏が行われた。新しい曲も良かったし、ラストの『Reborn』も良かった。いやー良かった。

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今日聞いていた思ったのだが、このアルバムの核心はやはり曲の『hell-see』にある気がしてきた。というのも、のっけの2曲『イエロウ』『不眠症』は割とアグレッシブで、ロキノン的な分かりやすい勢いがある曲のだけど、それに対して続く『hell-see』があまりにも重いからだ。
アルペジオの静と歪みの動というニルヴァーナ的な構成がなされるこの曲は、その前の曲に比べて、全然ノれないし、単純に暗い。ただ、この曲があることで、ズンと空気が重くなっているような部分があり、その空気の重さこそが、アルバム『HELL-SEE』らしさである気がしている。

少なくとも、今日一通り生で聞いてみて、そう思った。

美学や音楽哲学に触れてみたいなと思って、ちょっと前に佐々木健一の『美学への招待』を読んだのだが、次に読もうと思っていた『悲しい曲のなにが悲しいのか』を読めていない。
今日のライブを見ながら、早く読みたいと思った。

積み上がった本の山を探すところから始めねば。

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