『新装版 東京建築ガイドマップ』/倉方俊輔、斎藤理

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自分で買ったのだか、父親に買い与えられたのだか、ずっと前のことなのでもはや忘れてしまったが、この本は数年間自室の中で数度しか開かれることがなく、そして本棚で眠りの時を過ごすうちに私の心をじわりじわりと圧迫する呪いの書物と化してしまった。

そのような事態になってしまった原因が弱々しい私の心にあるのは認めるが、その一方で、こいつもこいつでひどいと思う。本書では、東京都(主に東部である)をエリアごとに分けて、そこにある有名な建築物を紹介していく。その紹介の仕方はかなり単調だ。切手くらいのサイズの一枚の小さな写真とともに、100字程度のごく簡単な説明が加えられるだけである。たったこれだけで読書がその建物に興味を持つというのは無理があるように思える。各建物の紹介とは別に、各エリアごとのざっくりとした歴史も書かれてはいるが、こちらの方もどうにも圧迫感があって、文章を素直に受け取れない。このような具合で、本書は全く私の勉強の役に立たないどころか、逆に私を追い詰める代物と化していた。

もしかすると、私がインターネット世代、もっと言えばウィキペディア世代であることもこの本を受け入れられなかったことに関係しているのかもしれない。義務教育の時分から読書をすることがほとんどなく、インターネットばかりを見て育ってきた私の頭は、こちらの方から情報を探りに行くということに完全に適合してしまっていて、与えられた情報をほいほいと飲み込むということにあまり慣れていないようだ。それも相性の悪さに繋がっているのではないかと疑っている。

しかし、一方でインターネット上の建築物についての情報はいまいち信頼性に欠けているのは事実である。また、そもそも情報が転がっていないということもしばしばだ。そういうわけで、最近の私は、何か有益な情報が落ちていないか本書を辞書的に参照しているという次第なのであった。のろのろと呪いから逃れていこう!