Felt - Felt (1971)

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最近聞いてよかったものについて書く。『Felt』は、米国のバンド、フェルトが1971年にリリースしたセルフタイトルアルバム。同じく「Felt」の名を冠したバンドとしてイギリスのネオアコのバンドが有名だけど、そちらとは無関係だ。

プログレの文脈で語られることも多い作品みたいだけど、自分は夢見心地で気持ちの良いサイケデリック・ロックを探していてこの作品を見つけた。幻想的な感じはすごくサイケなんだけど、複雑な曲展開やジャズのリズムを用いているところはプログレっぽくもある。またビートルズやブルースからの影響を色濃く匂わせているのも特徴的だ。

印象的な曲を二つ抜粋して紹介する。まず、M-1「Look At The Sun」について。ゆっくりとした曲だ。静かにエイトビートを刻むドラムと、メロディーを奏でるベース、そして跳ねるようなピアノが、とても気持ちいい。ボーカルのハイトーンも、自然な伸びやかさがあってとても良いと思う。田園風景を感じさせてくれる。また、曲の最後で突然雰囲気が変化してブルージーなギターソロが始まるところは、このバンドがアート・ロック的な方向性を志向していたことを端的に示しているようである。

もう一つ、M-5「The Change」について。10分を越える大曲である。ブルージーで重厚な演奏を繰り広げるギターとベースがめちゃくちゃ良い。マシンガンのようなドラムもとてもクール。近い雰囲気のところではディープ・パープルの「Child In Time」が連想されるが、あそこまで様式美や完成度の高さに拘ってはいないように感じる。バンドサウンドとしての爽快さや気持ちの良さを大事にしているような印象である。

 

60年代から70年代初頭にかけてロックミュージックシーンではいくつもの「発明」が起こり、そうして音楽ジャンルとしての深化が進んでいったわけだが、この作品は、そんな「発明」をごった煮にしたような音楽である。しかし、それらの要素がばらばらに分離しているようには感じない。幻想的なエコーがバンドの演奏を包み込むことで作品全体に霧がかかり、それによって統一感が与えられているようだ。