Portraits of Past - Discography (2008)

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アメリカの激情系ハードコアバンド、ポートレイツオブパストの編集盤。2008年にリリースされたものではあるが、音源はいずれも1994-1995年の活動時に録音されたものだ。

彼らが何を思ってバンドにこの名を冠したのかは分からないけど、「過去の肖像画」というその名は、彼らの音楽によく合っているように思える。もしも、過去の記憶すべてを写実するとすれば。きっと出来上がるものは、混じりっ気のないピュアなものではなくて、色々なものが混濁してどろどろとしたものになるだろう。多少強引な言い回しになったけど、ともかく彼らのサウンドには独特などろっとした感じがある。個人的ベストトラックは、M-2「Bang Yer Head」。時とともに移ろうようにして、カオティックな演奏が変質していくさまはあまりに美しい。そして何より、混然とした暗黒世界の静寂を切り裂くように響く鋭利なギターサウンドには、一度耳にしたら忘れられないような強烈なインパクトがある。

ところで、自分がポートレイツオブパストを聞いていた瞬間のなかで印象的なものを思い出してみると、浮かんでくるのは、夜中の眠れない時間にベランダで聞いていたとか、コインランドリーでぐるぐる回るカーペットをぼうっと眺めながら聞いていたとかそんな思い出だ。いずれも何か強烈な感情と結びついているというよりは、モヤッとした感情のなかで聞いていたように思える。このジャンルの音楽の暴力的な性質と、ぼんやりと聞くというのは一見程遠いようだけど、実はもしかしたらそれこそが今の自分にとっての激情系ハードコアの本質なのかもしれない、という少し意外な結論を得た。