U2 - The Joshua Tree (1987)

https://img.discogs.com/eLmB2vjqvQep2yK9RTAh_5tg4rk=/fit-in/597x600/filters:strip_icc():format(jpeg):mode_rgb():quality(90)/discogs-images/R-1341431-1215152830.jpeg.jpg

2014年、U2がTunesを通じて楽曲を無料配布したことは、ここ日本でも大いに話題を呼んだ。音源の配布が強制的であったため、ポジティブではない反応も多かったが、ロックミュージックに対して能動的ではないように見える人も、U2の行いに対して何かしらのリアクションを示していたのが印象的だった。また、ボノの社会的な活動は英語の教科書(『CROWN』という本だった)にも取り上げられており、その文章を読む回では、若い英語教師がこのバンドについて、少し楽しそうに語っていたのを、何となく覚えている。U2というバンドは、デビューから数十年が経過してもなお、世界規模でビッグな存在であり続けていた。

『The Joshua Tree』は、そんな押しも押されぬ大御所バンドU2が1987年にリリースした作品だ。そして、私などが改めて語るまでもなく、非常に高く評価されているアルバムである。

とにもかくにも、冒頭の三曲の完成度がすさまじく、いつ聞いても身がうち震えるほどの感動を覚える。ボノの情熱的なボーカルとエッジの美しいギターは対照的でありながらも、あまりにも完璧に調和している。空間形のエフェクトを用いたサウンドは、バンド初期のニューウェイヴ時代の面影を残しながらも、決してその枠組みに収まりきるものではなく、ジャンル「U2」と呼ぶより他ないだろう。威風堂々とした音のありさまは、バンド音楽の一つの頂点を極めていると言ってもいい。

このアルバムの弱点は、この三曲があまりにも素晴らしすぎて、どうしてもその他の曲が霞んで聞こえてしまうことにあるだろう。私自身、初めて作品を聞いた中学生の時分には、M-4「Bullet The Blue Sky」などが退屈に聞こえてしまって、頭の三曲ばかりをリピートしていた。

がしかし、時を経るにつれその他の曲の良さも、だんだんと分かってきた。「捨て曲」なんて言って簡単に切り捨ててしまうのはとんでもない。特に、M-6「Red Hill Mining Town」、M-7「In God's Country」、そしてM-9「One Tree Hill」。これらは名曲だ。ボノの情緒豊かな歌唱も、エッジのクールでアツい繊細なギターワークも、聞いていて込み上げてくるものがある。静かに煌めく炎、そんな言葉が似合う。

前を向いて、歩いていこう。そんな風にそっと自分の背中を押してくれる、尊くて欠けがえのない「心のアルバム」の一つ。