あなたが毎日の生活に疲れ切ってとても耐えられない気分になったら、静かに目を閉じてこの作品を聞いてほしい。気持ちが、ほんの少しだけましになるかもしれない。
ゆっくりと奏でれられる、とてもやさしい音楽。バタバタとリズムを刻むドラム、淡々とメロディーを奏でるベース、単純なコードとソロを奏でるギター。みんな不器用で、そして静かな熱を帯びている。その熱は、心の不安をやさしく溶かす。音のユートピア。彼らの音楽には、そんな言葉を与えたくなる。
夜。部屋の照明を暗くして『On Fire』を再生する。目を閉じて、M-1「Blue Thunder」から順に聞いていく。ゆっくりと時間が流れて、心の輪郭がだんだんぼやけていく。気が付けば、M-10「Isn't it a pity」(ジョージ・ハリスンのカバー)に到達する。最後、全てが一気に解放されるように盛り上がっていくところで、涙がこみ上げる。そしてあと三曲、ボーナストラックが続く。まるで少しずつ夢が醒めていくようにして、このアルバムは静かに幕を閉じる。
出会えてよかった。そんな風に思える素晴らしい作品。