THE BLUE HEARTS - TRAIN-TRAIN (1988)

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ブルーハーツ初期三部作を締めくくる作品に当たる。「終わらない歌」の詩に端的に集約されているように、彼らは1stアルバム『THE BLUE HEARTS』において「全てのクズ共のため」のパンクロックを歌った。その音楽は「弱者」のための「やさしい」歌として、当時の若者から人気を得ることになる。2ndアルバム『YOUNG AND PRETTY』でもその作風は継続して用いられた。「ロクデナシ」や「チェインギャング」など、世の中に迎合できない若者を題材にした曲が収録された。そして、3rdアルバムの『TRAIN-TRAIN』。この作品ではパンク以外にもブルースやカントリーの要素が取り入れられ、それによってバンドの音楽性は広がりを獲得する。一方で、その歌詞の強烈さは顕在だった。表題曲「TRAIN-TRAIN」では、綺麗な韻を用いながら、瑞々しい思いをストレートに歌い上げている。しかし、その「純粋」な世界観が描かれるのはここまで。二年後にリリースされる『BUST WASTE HIP』では、一曲目の「イメージ」から、他人のメッセージを無思慮に受け取る人たちのことを強烈に皮肉する。それまでの「弱者」への歌からの「決別」とも言える。その他の楽曲も、1stほどのストレートさはない。この傾向は以降のブルーハーツの作品においても続く。そして、ハイロウズの3rd『ロブスター』および4th『バウムクーヘン』で、感情をまっすぐに表現することへの回帰を見せていくことなるのだが。

とまあ恥ずかしながらも、ブルーハーツというバンドの概歴について少し書いてみた。かつては(特に精神的な意味で)彼らによく打ち込んでいた。高校一年生くらいの頃だったか、彼らの音源は毎日のように聞いたし、クロマニヨンズの全国ツアーの金沢公演を観に行くこともした(それが初めてのライブ体験だった)。今はもう当時ほどの熱量を以って彼らの音楽を聞くことはとても出来ない。

でも、あの時の感情は完全に消えてしまったわけではなく、形を変えながら自分の中で確かに息づいている。当時の自分の考え方に(良くも悪くも)強い影響を与えた曲はいくつかあるが、このアルバムに収録されている「青空」もその一つ。この曲にある次の一節が、高校のクラスに馴染めなかった当時の自分の心に深く突き刺さって、それ以来「誠実さ」というものは、自分にとってとても重要な視座であり続けている。

誠実さのかけらもなく笑っている奴がいるよ 隠しているその手を見せてみろよ
THE BLUE HEARTS 「青空」より)