2021-06-07 Date W/ IKEA

自我や魂というものが自分のウチの妄想世界(内面世界)を飛び出てソトの現実世界へとジャンプするような図を仮にイメージしてみる。すると、そこで音楽は、そんなジャンプを少しだけ楽にする触媒の働きをしてくれている気がする。あるいは逆に、現実から妄想の世界へと移行するときでも同じ。触媒は、それ自体変化しないものとして、化学反応の速度を速くする。音楽も、いついかなる時でも不変のもとして、自分が困ったときに助けを差し伸べてくれる。聞いている間だけ心がほんの少し軽くなるのだ。この説明はちょっと無理があるかな?

 

何はともあれ、最悪の状態から抜け出す糸口を掴もうと思って、ベッドから這い出て椅子に座って音楽を聞いてみた。こういうときに選ぶのは、たいてい昔からよく知っている曲になる。その方が安心するからだろう。

ペイブメントの音楽は、こんな気分のときにちょうどよい。彼らの楽曲には、暗く俯いてうじうじとしているような、斜に構えて世の中をバカだと思っているような、あるいは青臭いなりのしみじみとした感傷のような、そんなモラトリアム時代らしさがたくさん詰まっている。だから僕は、自分の未熟な精神を肯定してもらいたくて、そうして彼らの楽曲を聞いてしまう。

「Date W/ IKEA」(デート・ウィズ・イケア)は、彼らの四作目の作品『Brighten the Corners』に収録されている楽曲だ。(これは最近知ったことなのだが)この曲は、フロントマンのスティーヴン・マルクマスが書いた曲でではなく、もう一人のギタリストのスコット・カンバーグが書いた曲らしい。リードボーカルも彼が担当しているため、バンドの他の曲とは雰囲気がやや異なる。キャッチーなコード進行も相まって、明るくて楽しい感じに満ちていて、まさに「イケアに遊びに行きたくなる」ような。聞いていると、そんな気分になってくる。

と、これまで思っていたのが、今日はじめてこの曲の詩をちゃんと確認してみたら、その中にはイケアのことなど全く登場していなかった。海岸がどうとか芝生がどうとか、全体の世界観は何だかよく分からなくて不思議な感じがするけど、ただ、二度繰り返されるコーラスの部分と、同じ言葉を繰り返すアウトロの部分がやたらと頭に残った。 

I want to stay but my time is wasting
The magic lands call my name
They want to fire a missile launcher
But I know I need to stay

I know I need to stay and fight the day
I know I need to stay and fight the day
I know I need to stay and fight the day
I know I need to stay and fight the day  

Pavement「Date W/ IKEA」より)

ただ僕はここにいたいだけなのに、時間はどんどん過ぎ去っていく
不思議な世界が僕のことを呼んでいる
みんなそこでロケットランチャーをぶっ放したいんだ
でも僕はここにいなくちゃいけないんだよね

そう、僕はその日、ここにいて戦わなきゃいけないんだ
そう、僕はその日、ここにいて戦わなきゃいけないんだ
そう、僕はその日、ここにいて戦わなきゃいけないんだ
そう、僕はその日、ここにいて戦わなきゃいけないんだ

 

www.youtube.com