2021-06-09 うつ時間

どうなってもいいや、と思ってしまう。

迷宮に迷い込んだとき、じっとしていてもそこから抜け出ることは決してない。例えば、何の前触れもなく地面に穴が開いてあっけなくその中に落とされて死んでしまうような、そんなことはなかなか起きない。また自分もそんな理不尽を望んでいない。結局自分の足で迷宮から脱出するしかないのだ。それなのに、心は不合理にも、どうなってもいいやと思ってやるべきことを放棄してしまう。

見えないプレッシャーが心にまとわりついて、身動きが取れなくなる。一歩引いた冷静な視点からすれば四の五の言う前に行動すればいいのは明らかであるはずなのに、主観的な感覚として、精神と肉体が何かに覆われたような気分になって全く動けなくなる。何もできないならできないでいっそのこと気楽に過ごしてみればいいのに、そうもいかないから厄介だ。身体は動けないのに頭だけは地獄のように苦しんでいる、という最悪の状態にいつも陥る。言ってみれば金縛りのような状態だ。ずっと昔からこの症状に悩まされているはずなのに、未だに上手な対処法が分からない。

 

音楽を聞いて得られるのはせいぜい一時的な昂ぶりであり、それで問題が根本的に解決されることはないのだけど、それでも刹那の高揚感(ハイ)のために僕は音楽を聞く。BOaTのこの曲は、僕の心の憂鬱を「銀色」に染め上げてくれる。銀色の世界。そこでは、空がものすごい速さで回転していき、もはや人々はそのスピードに追い付けない。ただそれでも、彼らは静かな微笑を以ってそんな理不尽を受け入れてしまう。そこにあるのは、ただ粛々と己の生を全うしようとする真摯な生の態度だけ。そんな彼らを見ながら、僕も微笑する。全ての憂鬱は浄化され、そしてみんな静かに死へと向かっていく。

ほんの少しの間だけ、そんな偽りの多幸感に縋らせてほしいと思う。

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