イエスかノーかはっきりと分かれるバンドだろう。
M-1「Don't Get Down」を聞けば分かる。この曲を構成している要素は、ボーカルのボブ・ロングの歌声と、スリーコードを簡単に弾いただけのギターと、単純かつ不安定なエイトビートのドラムである。本当にただそれだけで、ギターソロもアルペジオもベースもなく、また(予定調和のようなブリッジのパートはあるが)とりわけ劇的な展開も用意されていない。
はっきり言って相当にヘボいこの楽曲に対して、全く魅力を感じない人も多いだろう。しかし、ここには、ビートルズにもボブ・ディランにもニール・ヤングにもヴェルヴェット・アンダーグラウンドにもなれない、ロック未満フォーク未満のヘボポップスなりの味わい深さというものがある。
ボブ・ロングは、一切のテクニックを排して、ただただ楽観的に「Don't Get Down」(=「落ち込まないで」)と歌い上げる。ライナーノーツ*1で彼は、この曲について「セルフヘルプ的な目的で書いた曲だ」と語っている。なるほど、単純極まる音楽的な構造は、他人(聴衆)にアプローチすることを主眼に置かない態度が具現化したものであるかもしれない。
冒頭でこのバンドに対する評価はイエスかノーか分かれると書いたが、ここまで読んでもらえば分かるように、私は断然イエスである。この何とも言えないショボさに同意してしまうのだ。